綺想の表象学―エンブレムへの招待2008/03/02 23:50

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4756607985.html
昨日散髪の帰りに久し振りに本屋に立ち寄った。人文書コーナーの棚を見ると、伊藤博明 綺想の表象学―エンブレムへの招待 ありな書房 2007年 が置いてあった。エンブレムについては『ノストラダムスとルネサンス』の「四行詩について」で読んだ記憶がある。手にとってみると542頁もの大著であるが中には図版が豊富に取り込まれており、エンブレムを眺めているだけでも面白い。第1章にはオラポロンの『ヒエログリフ集』がどうのようにルネサンス期に流布したか解説されている。ノストラダムスが最初に執筆した作品はオラポロンを詩の形式で訳出したものであった。当時印刷されなかったが手稿がフランスの国立図書館に保管されている。

1968年にはピール・ロレにより手稿を校正したものが初めて刊行された。手元にあるのは標本ナンバー901番である。そのなかにはところどころ木版画が挿入されおり、詩文のイメージ化が図られている。『綺想の表象学』の序文にもあるように、まさに「詩は絵のごとく」である。エンブレムとはもともと宗教上の道徳を説くもので、図像は言葉により解き明かされる。通常は表題、図像、エピグラム(四行詩のケースも見られる)から構成される。広く文学者や知識人により用いられていた。細川哲士氏によると、やがて奇妙な図柄に謎の言葉が添えられ図像の象徴化が進んでいった。エピグラムがテクストととして独立した四行詩として読まれるようになる。

ノストラダムスの予言でいえば、マテリアルは置いておいて、頭のなかにある予言イメージ、つまりエンブレムに相当するものを四行詩をいう流行の形態で記していった。これらがまとまった形でサンチュリ(百詩篇)が出来上がったものと考えられる。本当にそうした裏付けが取れるかどうか、この本が参考になればと思う。