ノストラダムスの伝統的な伝記2008/02/17 23:42

ノストラダムス雑記帳(http://www.geocities.jp/nostradamuszakkicho/)に「シャヴィニーの伝記」がアップされている。sumaruさんらしく多くの関連文献を参照した内容の整理が価値を高めている。正直にいうと、ノストラダムスサロンでも同じような記事を書こうと思っていた。二年前に伝記の下訳までは終わっていたのだが、そのまま放っておいたままだった。この記事は自分が調査したかった内容を肩代わりしたような感じでとても有難い。シャヴィニーの伝記は、現代の解説書にも引用されるほどポピュラーなものである。しかし指摘されているように内容は正確さに欠ける。もっともシャヴィニーはノストラダムスの予言作品に傾倒していたのであり、伝記に関して緻密な調査を行った形跡はない。

伝統的な伝記の参考文献として追加しておきたいのは、1913年のジャン・ド・ノートルダムの著作(1970年に再版されている)である。そこにはノストラダムスの伝記に関する文献を列挙している。トロン・ド・コウドゥーレ(パラメド)、エティエンヌ・ジョベール(1656)、ノストラダムスの伝記―アムステルダム(1668)、コローニュ(1669)版予言集収録、1789年『ノストラダムスの生涯と伝記』である。パラメドの18世紀の未刊行の手稿は2001年ブナズラによって解説を付して印刷された。ノストラダムスの遠い子孫とはいえ伝記に対する注意深さは見られない。冒頭の生年月日で12月2日などとしたり内容もシャヴィニーの伝記をさらに要約したにすぎない。

シャヴィニー発のノストラダムスの伝統的な伝記の出所はどこにあったのだろうか。ノストラダムスは『化粧品とジャム論』のほんのわずかな部分を除いて自伝のようなものは残していない。晩年秘書になったということで直接ノストラダムスから聞いたのかもしれないし、セザールの著作の草稿を参照した可能性も高い。ノストラダムスがパリを訪れたのを1556年としているが、これはセザールのわかりにくい文章を誤読したとも考えられる。今回のsumaruさんの記事は、ノストラダムスの伝記に関心のある方なら、是非とも読んでおきたい基本情報といえる。