将棋世界3月号を読んで2008/02/04 23:59

http://www.rakuten.co.jp/shogi/372953/403400/1866197/
最近の将棋世界は読み物が充実している。棋士の一番の自己表現は自分が指した将棋の棋譜なのだろうが、解説なしで鑑賞できる将棋ファンはそれほど多くない。珠玉の棋譜にも味付けが必要なのである。今月号の「プレイバック2007」は昨年もやっていたが非常にいい企画である。一般のアマチュアはプロ棋戦のほんのごく一部の将棋しか見ることができない。自分の場合ネット中継のあるタイトル戦などは印象に残っているが、その他はせいぜい週刊将棋の部分図しか見ない。そういったことからも現役プロが選んだトップ10というのは将棋の内容が濃く、さらにはその対局の背景に大きな意味のあるものが厳選されている。

栄えあるベスト1に選ばれたのは王位戦第七局。この将棋はネット中継を見ながら終盤の▲7七桂、幻の△7六桂が見えて大いに興奮した。誰が見ても文句なしのベストバウトであろう。もう一つ羽生の千勝通過の記事も今までにない掘り下げが行われていて面白かった。今の羽生を見ても、タイトルは減ったとはいえ七冠時代と比べて衰えているとは到底思えない。それだけの凄味がある。では羽生のどこに強さがあるのか。「進化する羽生将棋」では羽生ゾーンという話が出てくる。なるほど羽生が2三や2七の地点に金銀を置いた将棋の勝率がいいというのは、なんとなくわかる気がする。無筋の手を正確な読みの力で突き進めるところに羽生の強みがあるのだろう。

将棋世界の一番のコンテンツは勝っている棋士のインタビューである。羽生や渡辺のインタビューもうまく本音が引き出されている。将棋の単行本を精力的に出版している浅川氏の力量は本当に大したものと感じた。