ノストラダムスの結婚契約書2008/01/27 22:41

ノストラダムスは生涯二度結婚している。以前ノストラダムスサロンで「最初の結婚、アジャン物語」という拙い記事を書いたことがある。最初の結婚についてはシャヴィニィの記述以外に情報が乏しいが、竹下節子著『ノストラダムスの生涯』71頁によれば1531年の結婚契約書がアジャンの古文書館で見つかった。ところが奇妙なことに最近のノストラダムス本を見ても、この重要な発見の追加情報がない。ラメジャラーの書いた伝記"The Unknown Nostradamus"(2003)ではアンリエット・ダンコスの名前しか出てこない。「ノストラダムスの家」のパンフレットにも触れられていない。これを実証的に研究した成果が出てこないのは何故なのだろうか。

これに対して二度目の結婚については、サロンの公証人エチエンヌ・オジエのアーカイブのなかに結婚契約書を見ることができる。結婚式の日付は1547年11月11日。相手のアンヌ・ポンサールはサロンの法律家ジャン・ボームの未亡人であった。このときノストラダムスは43歳、アンヌの生年月日は記録にない。この後予言者が死去するまで19年間連れ添い、二人の間には六人の子供が生まれた。アンヌが亡くなったのは1582年である。ノストラダムスの遺言書ではアンヌが妊娠していたケースも想定していたことから1566年当時で40代半ばくらいか。仮に45歳とすれば結婚時の年齢は26歳、死去したのは61歳くらいとなる。(シュロッセの本155頁では結婚時おおよそ30歳とみている)

アンヌの名前はノストラダムスの墓碑銘に刻まれているが、そこにはANNA PONTIA GEMELLAとある。最後のジュメラとは何を意味するのだろう。ラメジャラーはラテン語gemellus(双生児)と受け取っている。ノストラダムスの遺言書を読んでもジュメルというのは出てこない。結婚契約書のテクストが判明すればはっきりするかもしれない。ただシュロッセの本に出てくるテクストは手稿と対応しているようには思えない。