王将戦第一局は羽生が完勝、幸先の良い1勝目2008/01/19 03:21

http://mainichi.jp/enta/shougi/ohsho/
王将戦第一局は羽生の完勝。相性もあるのだろうがやっぱり羽生は強い。久保の生まれて初めての封じ手はなんとも意外な▲4六歩。こう指せば後手の△2六歩が見えているだけにちらっとは考えたがまっさきに切り捨てた手であった。本譜は△2六歩とクサビを打たれて先手は防戦一方。とても好んで指す展開とは思えない。久保の思惑はどこにあったのだろうか。▲4六歩を封じ手にすれば恐らく羽生の読みを外して一晩△2六歩以下の展開を徹底的に読むことができる。これがアドバンテージと思ったのかもしれない。

将棋世界2月号の「イメージと読みの将棋観」のテーマ3封じ手のトップ棋士の心情を読むと、羽生は封じ手をするのはどちらでもいいという。今回の対局では実に微妙なタイミングで相手に封じ手をしますかと投げかけている。あなたに封じ手の選択を委ねますよ、と。これに対して久保が策を弄しすぎたのが▲4六歩ではなかったか。一局の将棋で言えばこれも作戦の一環なのだろうが、大事なタイトル戦の第一局で相手は連敗中の羽生と考えれば先手が勝ちづらい展開は避けるべきだった。メンタルを重視すると宣言していた久保が逆に肩に力が入りすぎてしまったともいえる。しかし中盤の久保の頑張りは見ごたえがあった。

一時は盛り返したかと思えたが、苦しめの時間が長いほどそれだけ疲労の度合いも高くなり勝負所まで余力を残せなくなる。実際終盤も久保が先に持ち時間がなくなり時間を使いきったところで投了となった。先手番でなおかつ本来は振り飛車党の土俵であるはずの相振りで落とした久保の前途は厳しい。この敗戦は早く忘れて第二局以降の巻き返しが見たい。

ジャン・ルネ・ルグランの注釈2008/01/19 17:52

http://www.geocities.jp/nostradamuszakkicho/
ちょっと前にこのブログで紹介したノストラダムス雑記帳の記事、五島氏と「プロの研究者」が訂正されている。スタッカートの件はたいした情報でもないのだが随分と丁寧な謝辞をいただいた。文章を読み進めていくと、五島氏のノストラダムス本でたった一回だけ言及しているルグランという名の研究家に関するツッコミがあった。はたまた五島氏が創作した海外の研究家と思いきや、この人物も実在する。けれどもノストラダムスの関連本でほとんど聞くことのない名前である。sumaruさんも書いているように、ジャン・ルネ・ルグランは「イニシエーションと科学誌」47号(1959年1月)に「1959年についての予測」という記事を執筆している。

五島氏がルグランに言及したのは『ノストラダムスの大予言V』。ネタ本としてセルジュ・ユタン編『ノストラダムスの予言集』1973年版を用いている。ひょっとしたらと思いユタンの解説を丹念に読んでいくと、ルグランの記事の引用が見つかった。ユタン本の44頁(1989年版も同じ文章)、ノストラダムスが間違いなく第二次世界大戦時の恐ろしい空爆を予知していた、という解説のくだりに、ルグランがドゴール将軍に関する百詩篇を見つけたとある。(3-14,5-79,3-27,1-97)ユタンは別の四行詩7-35を引いて、個人的な見解としながらも、ノストラダムスが伝承に基づいてフランスの威光を復活させる未来の「大君主」について語ったのだろうか、と結ぶ。

もちろんここにはアンリ二世への書簡に関する記述はひとつも出てこない。五島氏はユタンの解説をろくに読みもせずに、futur<<Grand Monarque>>だけを見て、アンリ二世への書簡を未来の君主に宛てたと考える研究家にルグランを仕立ててしまった。最近、ピエール・ラモットの『四世紀前ノストラダムスにより明らかにされたドゴール』(1961)という本を入手した。その当時の研究家たちは、祖国の英雄ドゴールが1958年に政権に復帰して第五共和制を築き上げたのを、予言集のなかに見出すことに喜びを感じたのであろう。