ノストラダムス予言集の五島異本2008/01/10 22:57

sumaruさんの「五島勉『大予言』シリーズへの批判(書誌編)」では、五島氏が『大予言』初巻で紹介した予言集の異本のデタラメさを指摘している。さすがの五島氏もロバーツの邦訳が刊行された以後は表立った予言詩の創作は控えたと見える。しかし『大予言』出版直後の週刊誌には、悪乗りして未発表部分と称しそれこそ勝手に予言をこしらえていた。微笑1974年1月26日号の記事、特集「ノストラダムスの大予言」恐怖の未発表部分!「滅亡の詩」には何が書かれてあったか!?――にはイタリアや英国に伝えられた異本からとして四篇の四行詩をねつ造している。もちろんフランス語原文などはない。それはオリジナルのテクストの日本語訳をつぎはぎして適当な語句をつなげた粗悪品である。例えば、イタリア異本第一巻49の詩は次のようなものである。

 女たちはもはや生もうとはしない
 人間よりもケダモノが名誉とされる
 かくて血と残虐とめどなくはね上る小麦
 大いなる世紀があらたまるすぐまえに

1行目は同じ記事で紹介された読者の投書、2行目と3行目はオリジナル2-75の変形、4行目は1-16の4行目からとあまりにも安易なシロモノである。他の詩も似たようなもの。そうして「どれも完全に理解できなくとも、なんとなく大意はわかり、強いて解説の必要もないだろう」と書く。環境問題うんぬんといって論点をすり替え続けた五島氏のノストラダムスに対する姿勢というのは最初からこの程度だったのだ。

この記事では恐怖の大王の新説としてアメリカのテキサス大学のA.ジャクソン博士という人物が出てくる。それによると恐怖の正体は天文学でいうブラックホールだという。大学教授で本当にこんな説を発表する人がいるのかと思っていたら、上の雑誌記事から3年後に出版された『ツングース恐怖の黙示』100頁で、ツングース隕石の正体がブラックホールであったという仮説を発表したアメリカのテキサス大学物理学教授のジャクソン博士が登場している。

そこには恐怖の大王の解釈うんぬんというのは出てこない。これもまた五島氏の創作である。五島氏の本へのツッコミはこうして尽きることのないネタの宝庫といえるだろう。