加治木氏のノストラダムス本について2009/07/01 23:56

http://www.geocities.jp/nostradamuszakkicho/kajiki/kajiki.htm
ノストラダムス雑記帳で「加治木氏へのツッコミ」がアップされた。大事典とはまた違った角度でノストラダムス本を検証しているが、相当マニアックな(失礼!)内容に仕上がっている。1990年、第三次ブームに便乗する形で登場した加治木氏の著書に対しては正直それほどの重要性を感じなかった。氏の解釈への熱意は伝わってきたが、所詮は「人類滅亡」の否定を旗印に、少々ハッタリをかました人畜無害の予言解釈パロディ本程度にしか思えなかった。90年代にシリーズ化して何冊もの『真説ノストラダムスの大予言』本が出たが、せいぜい一、二度、目を通した程度でそれほど読み込んだ記憶がない。もちろん2002年の米同時多発テロの便乗本を読んで以来、一度も手に取ってはいない。そんな加治木氏の本に対して今更ながら詳細な分析がなされたというのは驚きである。

各々のノストラダムスブームに洗礼を受けた世代間の温度差といえるかもしれない。加治木氏の本で印象に残っているのは「ツッコミ」にもある序文のユニークな解釈である。そのソースがいったいどこから来たものか当初疑問に思っていた。「ツッコミ」ではその辺りが実に細かく分析されている。ルゾー本(邦訳)の訳を適当に膨らませて独自解釈したというのは正解であろうが、ルゾー訳の信頼性が低い背景については触れられていない。ここではその系譜を辿ってみる。セザールへの序文は、1555年初版の予言集の冒頭に置かれ、オリジナルの仏文テクストはブランダムールにより校訂もされている。リュゾの原書である『ノストラダムスの遺言書』スペイン語版には「36の段落に分けられたフランソワ・ド・ピエールフの現代フランス語に適合した書簡序文のテクスト」とある。

実際のところスペイン語の重訳である。それをフランス語版で再度フランス語に訳し、それを原文として日本語訳され、さらに加治木氏が解釈したというややこやしい話である。整理すると、1) 序文のオリジナルテクスト 2) フランソワの現代フランス語訳 3) リュゾのスペイン語訳 4) ロシェ出版によるフランス語訳 5) 二見書房による日本語訳 6) 加治木氏による独自訳 と重訳に重訳を繰り返し、なかには原意を留めていない箇所も少なくない。例えば、 le nom de prophete(予言者の名称)が途中 le terme de Prophete (予言のテーマ!)に化けて、最終的に「『PROPHETIES』という表題」に変換されるなど、まさに抱腹絶倒の嵐である。こうした観点からも是非、上のサイトの一読をお勧めしたい。

コメント

_ sumaru ― 2009/07/02 22:41

早速のコメントありがとうございます。まあ、自分でも細かすぎるネタだとは自覚しています(^^;

大事典の場合、広く知られているネタは極力扱いたいと思っているのですが、加治木氏の場合、ちょっと影響力の程度が微妙で扱いに困るんですよね。もう閉鎖されたようですが、何年も前には加治木氏の方法論に全面的に依拠するような信奉者側のサイトも見た記憶がありますし。
その辺の印象度は、おっしゃるとおり、各人の受容のタイミングによってかなり違ってくるのだろうと思います。

個人的には当時の深夜番組(確か日テレ系の『EXテレビ』)で、加治木氏がアンゴルモワはアジョルムワと読めると主張したときに、升添要一が「アジョルムワ、うん確かに」と発言したのが印象に残っています。当時フランス語が読めなかったので、フランス語を読める政治学者が認めているという点で、否定できるのかどうか迷いが生じたのです。
今では、あのときの升添氏はタレント文化人として場の空気を読んだだけ、とでも理解すべきだろうと思っていますけれどね(^^;

>例えば、 le nom de prophete(予言者の名称)が途中 le terme de Prophete (予言のテーマ!)に化けて

これは全く予想もしていなかった話でした。仏語版は後半の書誌部分のコピーは持っていますが、前半は考慮に値しないと思って、ろくに読んだことすらなかったもので(^^;
なんとなく、きちんとオリジナルのフランス語原文に戻しているのだろうと思っていましたが、そうでなかったわけですね。すると、ルゾー本の訳者のフランス語力が壊滅的だったとばかりはいえませんね。大事典のほうで記事を立てる前に気付けてよかったです。

_ 信奉者 ― 2009/07/03 22:57

当時は人類滅亡とか恐怖心を煽って金儲けする本が多かったなかで「人類滅亡はない!」
とする加治木氏氏主張は目新しかったですが、恐怖の大王の詩をイラン・イラク戦争、デクエヤル総長と解釈したのは当時から「なに言ってんだろ?」と思っていましたw

_ 新戦法 ― 2009/07/04 22:06

sumaruさん、コメントありがとうございます。

> なんとなく、きちんとオリジナルのフランス語原文に戻しているのだろうと思っていましたが、そうでなかったわけですね。

ええ、今まで書かれた記事を読むと何となくご存じないのかなと感じていたのでいつか紹介しようと思っていました。今回はちょうどいいタイミングだったかもしれませんね。だからといってルゾー訳が忠実かといえばそんなこともなくいい加減な意訳をしているのは間違いなさそうですが。(^^;

_ 新戦法 ― 2009/07/04 22:12

信奉者さん、

> デクエヤル総長と解釈したのは当時から「なに言ってんだろ?」と思っていましたw

私の感覚もまったく同じようなものでした。解釈の手法もそうですが、デフレヤー(恐怖)をデクエヤルと読むのはいくらなんでも無茶苦茶だろうと。そんな解釈に共感した人も当時は多かったのかもしれませんが。(^^;

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