文字の歴史2008/09/20 23:49

http://bookweb.kinokuniya.co.jp/htm/4422210513.html
ジョルジュ・ジャン著 矢島文夫監修 文字の歴史 創元社 2008年 を読んだ。いつものように書店に入って人文コーナーを見るとこの本が平積みされていた。新刊かと思い手に取ってみると実は1990年初版で20刷発行とある。この手の双書では珍しく18年間ずっと刊行されてきたロングセラーなのだ。試しに紀伊国屋のウェブで検索すると、「文字の歴史」というタイトルの本は6冊見つかる。普段我々が何気なく使用している文字だが、いつ誰が発明したものか思いめぐらすと不思議な感覚に包まれる。そもそも人間が言語を持つようになったのはいつの時代の頃なのか、正確なところは誰にも分からない。

人間は文字を持たない言語文化の時代を経て、記憶による伝承から各種の宗教書・叙事詩を記すために文字を必要とするようになる。現在知られている世界最古の文字は、紀元前4000年紀の粘土板に記されたシュメールの楔形文字である。本書にその断片の写真が載っているがそれが帳簿の断片というから驚きである。当時貨幣を用いていて大がかりな社会組織が出来ていたというが、こうした文字による記録が残っていなければ歴史自体が空白になってしまう。こうして文字は世界のいろいろな所に出現し、様々な書物が書かれるようになった。その中でもアルファベットの発明は画期的なものである。もとを正せばヒエログリフから来たものらしい。

古代の文字の解読について本書の6章で述べられている。楔形文字やロゼッタストーンのヒエログリフが解読されたのが19世紀に入ってからというのは意外である。偉大なる先人たちが残してくれた文字とそれを用いて書くことの大切さが改めて心に沁みる。文字を苦心して発明した太古の人類が、今日の情報化社会でインターネット上に見る文字の氾濫を見たらどう感じるだろう。もうちょっと大事に使ってもらえないものか、と記すかもしれない。