ヘンリー・C・ロバーツのノストラダムス解釈本2008/09/07 23:06

1974年、日本で第一次ノストラダムス・ブームが起きたとき事実上予言集の原典と見なされていたのがヘンリー・C・ロバーツHenry C. Roberts『ノストラダムスの完全予言』The complete prophecies of Nostradamus である。五島勉氏の『ノストラダムスの大予言』や高木彬光氏の『ノストラダムス大予言の秘密』に本の表紙のカットが載っているので覚えておられる方がいるかもしれない。手元の原書は1981年第45版。著作権表示を見ると、1947、1949、1962、1964、1966、1968、1969とあるから少しづつ改訂されていったのだろう。五島氏は参照した版に触れていないが、高木氏は最初ある人から秘蔵の本を借り出し(1970年第20版)研究を続けながら別にアメリカに注文したという。(1973年第22版)1969年以降は版を重ねながらも特別な改訂はなかったと思われる。

日本で初めてロバーツの解釈を紹介したのは黒沼健氏である。1963年に出版された『古代大陸物語』の「ノストラダムス落穂集」で1949年に刊行されたロバーツの解説書(第2版)から第二次世界大戦に関係する予言を拾い集めている。日本関係のもの3篇、ドイツ関係のもの11篇、イタリアに関係のあるもの5篇、そのほかの驚異の予言3篇。四行詩の形式で翻訳されているが特に章番号は記されていない。「謎のヒトラーの最後」という作品では章番号を付してノストラダムスの予言第10巻4番の詩と透視能力者フルコスの奇妙なエピソードを紹介している。ロバーツの示した予言集テクストは序文にもあるように、1672年の最初の英訳者テオフィルス・ガランシェールの本である。この本は偽の四行詩が含まれていたり、歪められたテクストが取り込まれているなど評判は芳しくない。

それにも関わらず現在でもロバーツの本は版を重ねている。著作権表示によると、1982年には娘婿のリー・ロバーツ・アムステルダムとハーベイ・アムステルダムによる新装改訂版が現れている。手元には1985年にグラフトンより出版されたペーパーバック版がある。これを見ると、フランスのブームを受けてか、2-97などは1981年の事件と解釈を変更している。ちなみにたま出版の原典は監修者の内田秀男氏が1966年に友人の尽力で入手した原書の翻訳とある。戦後、話題となったロバーツの解釈本、今やその使命を完全に終えたのは間違いない。