セルジュ・ユタンのノストラダムス本2007/11/08 23:46

上の画像はセルジュ・ユタンによる初期のノストラダムス本(1966年刊)である。彼の名は『ノストラダムスの大予言Ⅴ』(マガジン・ノン版、1985年)で五島勉氏が1973年版をユタン秘密本と名付けてレア本扱いをしたことから日本で知られるようになった。もっともユタンの専門はエゾテリスムで文庫クセジュより『秘密結社』『錬金術』の邦訳が出ているほど、フランスではその分野の顔として有名であった。ユタンは1929年パリで生まれ、ピレネー・オリエンタルのプラドで1997年11月に亡くなった。各種神秘学の研究に没頭し、そのひとつとして占星術師であるノストラダムスのモノグラフィに入って行った。1966年版は74頁までユタンの解説、簡潔なビブリオグラフィをはさんでアンリ二世への書簡、十巻の百詩篇、補遺篇といった構成である。現行版とは異なり各四行詩毎の注釈はついていない。

五島氏が最初に1973年版の秘密本の画像を著書に載せたのが、1984年に出版された『2000年5月5日』である。しかし『大予言Ⅴ』では1984年の11月末にユタン本が手元に届いたことになっている。ちょっと矛盾しているが去年というのが1983年を指すのであれば話の辻褄が合う。この時以来五島氏はノストラダムス予言集の原書としてこのユタン秘密本を愛用していた。週刊宝石の1999年2月11号の特集記事でこの本を読みながらポーズをとっている五島氏の姿がある。ユタンのノストラダムス予言集の注釈本は今日まで絶えることなく出版されている。最近のものはシャトレ出版から出ているポケット判で、冒頭91頁の解説とアンリ二世への書簡、十巻の百詩篇のみで補遺篇は含まれていない。この本はユタンの注釈をベースにボドワンが増補した構成となっている。

ユタンの持ち味が最もよく出ているのが『ノストラダムスと錬金術』という本であろうがまだ細かくは読んでいない。ユタンの四行詩の注釈はとても学術的とはいえない。神秘学の専門家であったユタンに一般受けする安易な予言解釈へと向かわせてしまったのか、今でも謎である。

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